「離れねぇな」

「なんとかしろよ」

「この子、バカ力みたいよ」

「太ったか?」

「そぉいや、この三日間食いまくりだ」

「痩せさせろよ」

「俺、子守役をかったつもりねぇ」

「否、甲斐甲斐しく面倒みてやってるよ。 いつもご苦労だな母さん」

「…………」

「いだだだっ! おいっ、永倉っ、足はやめろ! 痺れてんだぞ!」

「わざとだよ。 父さん」

「…………」

「…………」



土方、永倉はお互い見つめ合い、頭を左右に振った。


こいつと夫婦になった覚えはないと、互いにやりあったボケに吐き気をもようしたのだ。


「とりあえず、土方さん。こいつが起きるまで添い寝するしかねぇな」

「最悪じゃねぇか」


男二人がかりでも離れない矢央を見て、二人は諦めた。

「俺は今から見回りだから行くわ。 なんなら、佐之でも寄越そうか?」

「あ〜…否、いい。 そのうち起きるだろ。 俺も寝る」

「そうかい。 じゃあ、風邪ひかすなよ」



矢央ごと畳の上にパタリと倒れた土方を確認して、永倉は部屋を去った。


風邪をひかないようにと、出て行く時に障子戸を閉めて。



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