未来を変えようなんて思わない。
神以外の者が勝手に運命を変えるなんてしてはいけない。
だがそれをやろうとしている者を、矢央はただ一人知っていた。
「お華さん……」
お華が何をしようとしているのか、未だに分からないままだが、矢央は一つだけ決めていた。
自分なりに、自分のやり方で守りたい人達を守るのだと。
だから、もう弱音を吐かない。
やる前から悩むなんてやめてしまえ! と、自分自身に言い聞かせていた。
そんな矢央の視界に、うっすらと差し込む外の明かりが見えた。
――――ガラッ
ガタガタと戸を押し開けたのは、最近知ったばかりの顔だった。
「あれ? 間島さん?」
「こんにちわ。 楠さん」
全て閉ざされた道場内に、まさか人がいると思っていなかったのだろう。
楠は一瞬驚いた表情を浮かべたが、矢央だとわかるとあからさまにホッとしてみせる。
そんな楠を見て、やはり何か違和感を感じてしまった。
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