裸の男に抱き締められ、慌てふためく。


「未来とは、まっこと奇天烈ぜよ! やはり、日本はこのまま小さい国でおさまっちょう場合じゃないきに、日本の未来に必要なもんちゅうんは、世界を知らにゃ始まらんちゅうことだにゃあ!!」

「さ、坂本さんっ!?」

「おまんに、もう一つだけききとうことがある」


耳元で落ち着いた口調で問われた矢央は、ゴクンと唾を飲み込んだ。


「おまんが生まれた未来ちゅうのは、平和な国か? 皆が平等に平和に暮らせる世になっちょうがか?」


グッと、抱き締める腕に力が籠もる。


未来の平和のために、今の日本を変えなくてはならないと開国迫った坂本龍馬。

彼の顔には自信が満ち溢れていたが、それはただの強がりなのかもしれない。


今は倒幕派は追われる身、坂本もその一人。

いつ夜道や寝込みを襲われたとしても不思議じゃない生活は、壬生浪士組とて変わらないが。

時代を変えようと働く坂本には、自分の信念しか頼りどころがなかったのかもしれない。


矢央の答えによって、また確信を持てるかも――――



「世界では、まだまだ戦争や貧困、差別はあります。
でも日本では、戦争もなく平和に暮らせてるかもしれない」


曖昧な答えだった。



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