矢央は、目の前にいる坂本龍馬を食い入るように見た。


この、無精髭おじさんが?


どうも信じられない。

ゲラゲラとよく笑い、人懐っこさがある。


坂本龍馬といえば、歴史に疎い矢央でも知る程に有名人だ。


これからの、日本の未来を変えるために坂本龍馬がなくてはならい。


細かくは、どんな事をした人物かわからなくても、彼に会いたいと思う人は嘸多いだろう。


だからこそ、矢央はバッと手を前に差し出した。


「握手して下さい!!」

「は?」


坂本は意味がわからないなりに、素直に応じている。


握手出来た矢央が幸福感を堪能していると、ふと坂本に髪を引っ張られた。


なんだ(?)と、振り返ると、坂本は瞳を輝かせていた。

どうやら、矢央の髪に関心を示しているようで、


「ほんにまっこと綺麗な髪だにゃ!? ずっと考えとったじゃが、おまんはメリケン人か?」

「メ、メリケン?」


メリケン粉? いやいや…。


「こんな髪、日の本では見たことないきに」


まじまじと、顔をのぞき込まれると照れてしまう。

ほんのり赤く頬を染め、矢央は思いついた言葉を尋ねた。


「アメリカ…ですか?」

「あめり、めり?」

「あー、もう良いです。
多分、勘違いしてますよ。 私は、日本人ですもん」


そういえば、初めて近藤達に出会った時も間違われたなと懐かしくなった。



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