「彼女がいるんだから。

さすがにそこまではしない。

この前は、別れてるのも同然だったからつい…だけど。

でも、立てない責任は取ろうかな」

兵庫は麗を、軽々と抱き上げて、廊下を突き進んだ。

先には広いリビングがあって、そこのソファに、麗はそっと置かれた。

「そだ、忘れ物は?」

「・・・ピアス」

「口で簡単に説明できたじゃないか」

兵庫は、イカりを込めて、笑う。

「ごめん。説明したくなかったから、説明できなかったんだ。

どうしても、ここに、また来たかったから」

兵庫は、黙った。

それから、

「調子狂う。オレ、自慢じゃないけど、そういうこと、言われたことない。

正直言って、好きだって言われたのも、麗が初めてで」

「じゃ、自分が言うほうだったんだ」

「ま、そだね」