兵庫の住むマンションは、改めて見ると、とてもゴージャスな感じだった。
玄関の正面のパネルに、今日は鍵を刺して開錠する。
エントランスの造りも、重厚な感じ。
エレベーターに二人で乗り込むと兵庫はちょっと麗と距離を取って立ち位置を決めた。
「これ、止まっちゃったらどうする？」
麗が、表示される階数の数字を見ながら言った。
「困る」
「･･･殴っていい？そりゃ困るに決まってるでしょ」
ちょっとイカって兵庫を見ると、意外にも、兵庫は真面目な表情だった。
「本当に困るんだ。
他の子ならともかく、麗とここに閉じ込められたら、オレ喜んでしまうかも。
それって、彼女のいる身としては、とても困るわけで」
言って、兵庫は本当に困った顔をして、笑った。
