……忘れ物?


麻耶、なんか持ってきてたっけ?



んま、いいか。


それより戻ろ戻ろ。



あたしはまた歩き出した。



そして、あたしの教室がある階につくと、何故かあの噂の『萩浦弘樹』くんが階段の前でうろうろしている事に気づいた。


あたしは素通りしようかと思ったが、なんとなく気になって、話しかけてみることにした。



「あの…どうしたの?」



『…あ、えっと…

南側の校舎ってどこにあります?』



南側の校舎!?

…あの~ここ西側の校舎なんだけど。





萩浦君って見かけによらず、方向音痴だね。




「あのね、ここ西側の校舎なんだけど


南側の校舎はここから真っ直ぐ行ってそこを曲がったら渡り廊下があるから、そこを真っ直ぐ行けば南側の校舎だよ」



『…あ、ハイ。


っていうか、先輩。

さっき俺のこと方向音痴って思いませんでしたか?』



萩浦君は、そう言って微笑んだ。