「この辺りでは争いに勝った者は敗者を食料にする。今からメインディッシュになる奴と仲良くしようなんて変てこな輩にこの子達は会ったことがない」
「まさか!君達を食べるつもりはないよ。第一、僕は生肉が食べられない」

生肉の感触と血の匂いは、『報生の償務』と言う名目の元に行われた殺人行為を思い起こさせるからだった。
しかしそのリーダー格の猿は実に人間じみた嘲笑の声をあげた。

「ここいらには坊ちゃんみたいな育ちの良い連中はいないのさ。食べられりゃなんだって構わない。その日生き抜く事しか頭にないんだよ」
「君達はこうやってグループになってるじゃないか」
「あたしらはそういった習性なんだよ。ここで生きていく為にそうなった。お互いが生き残る為に命張れる仲間さ」

ザザザザッバギィッガサガサァッ!!

後ろの方から急に近づいてきた気配に、リーダー猿は言葉を切った。
他の猿達の気配が、急に小さくなった。
小さな希望にかけて、見つからないようにするが、やはり気配は真っ直ぐにこちらを目指して接近していた。
僕は、身動きのとれない6匹の猿達に背を向け、近付く気配と対峙する。

後ろの猿達の、怪訝そうな視線は見なくてもわかった。

「ここで僕が逃げずに君達を守ることが出来たら、その仲間に入れてくれるかい?」

数秒、沈黙があって、やがて答えが返ってきた。

「生き延びるためなら何だってするさ」

僕は振り返って笑う。
彼らが驚愕の表情で僕を見ていた。

「絶対だよ!」

そして、僕は目の前に現れた黒い巨体と対峙する。