クロスメイアスは、瓦解しそうな意識の端を、6匹の猿と、自分が認めた青年が走り抜けるのを見逃さなかった。



それが、活力になる。

この命尽きるまで、出来るだけ気を引き付ける。






太い触手が数本、リン達を目掛けて伸びてくる。


急に怒涛の勢いで襲い掛かり始めたクロスメイアスのおかげで、指で数える必要もない程少ない。



「ギィッ!」

「ンギッ」


自分の身体を盾に、リンの行く手を開ける。
戦闘能力の低い彼らにはこれが限界だった。


「ギァッ」

「フグゥッ!」



白面の猿までもがリンの元を離れ、触手を身に受ける。


次の手を防ぐ為に、アキがリンの前に踊り出る。

と、触手はアキの前で二手に別れ、片方はアキの胸に、もう片方はリンへと向かう。









行かせて…


「たまるかってんだぃ!!」








左手を伸ばし渾身の力でそれを掴む。
その僅かなタイムロスを受けてリンはライアの元へとたどり着いた。

グシュウッ

残った力で触手を握り潰すと、粘ついた液体が飛び散った。













自然に口角が上がる。




「どんなもんだい…」



胸張れる最期じゃないか、と、空いた右手を空に掲げる。




やがてそれも力無く下りて行った。