「……………ライア…」
白い梟の羽の中で、グラジオラスは呟いた。
先程の、少女の叫びに、胸が熱くなる。
痛切な、悲痛な、傷の上にまた傷を作るような懇願。
あいつは、何をしてる…。
「彼女を育てよと、王から仰せつかったこの10と数年…」
声の主を見上げると、クチバシの位置にある高い鷲鼻が見えた。
「私はとても満たされておりました」
「……」
「時が来れば全ては朽ちる」
なんと答えて良いのかわからないグラジオラスを意に介さず、独り言のように続ける。
「やはり、人間と言うのはとても興味深い」
その声は、穏やかで、優しげで、楽しげだった。
いつか話した他愛ない会話を思い出す。
『メイスフォール、人の間では生き物は死んだ後違う世界へ行ってもう一度この世に生まれ落ちると言われてるんだ』
『ホウ?興味深いね』
『愚かな。生き物は死すれば皆土にかえるものだ』
『頭が堅いな。クロネコ』
『魂だけは、あの世とこの世を何度も廻る。
私は素敵だと思うな。
覚えてることは無理だと思うけど、私の周りにいるのは無関係な者ばかりではないかもしれないと思えるだろう』
『ホッホウ、いかにも』