ライアの声に動きを止めた一瞬が隙となった。




刺される、と言う直感。















「やめてよぉ…」


ライアは泣いていた。

自身を抑え込もうとするかのようにその身を抱き。



「リン…だけは…っ…」


自分の中の"力"に精一杯懇願する。


たとえそれが"防衛本能"だったのだとしても、

それがなかったらライアの心が壊れかねなかったのだとしても、

"お父さんまで喰ってしまった"あの時のようにしてしまうには、

手放す事の出来ない想いがライアの正気を呼び戻している。


「…ふっ…うぅ……っ…!」



ボロボロと涙が零れてくる。
祈りのような訴えを、自身に向ける。


「我慢…するから………っ…」



制御することの出来ない"本能"への懇願。








「何を失っても……我慢、するから…っ……」





不器用な優しさが大好きだった、
この森の王を忘れても。


父のように師のように、
世界を説いてくれた梟を忘れても。


幸せをくれた、
無償の愛情を注いでくれた、
大好きな大好きなこの森を、忘れてしまったとしても……





















「リンだけは…っ…!……リンだけは私の中から消さないでぇっっ!!!!」



.