ドクン…ドクン…
心臓の動きに答えるように触手に喰われた穴から鮮血が流れている。
先刻の闘いで散々血を飲んだからまだしばらくは動けるだろう。
…あいつは、またこんな事に胸を痛めるのだな。
バイアスは優しい旧友を想い、ふ、と苦しげに笑う。
再び触手が手を伸ばす。
異人類種"吸血鬼"は"吸魂鬼"とも呼ばれ、生命力を供給する能力に特化し、その生命力の強さ故に羽付きの次に戦闘能力の高い種類と言われた。
何もしなくとも長く触れれば周囲の草木は枯れ、常人は短命になった。
その為城にいた頃は周囲から疎まれ、専ら暗殺や実験など、裏の社会で生きてきた。
悲しくなどなかった。
寂しさなど知らなかった。
…―『ねぇ、こっちに来て少し話そうよ』―…
常人より長い手足。
月色の髪に、白い肌。
女と見紛うような笑顔を見せる子供だった。