ふらふらとライアに近付こうとするグラジオラスの前にバイアスが立ちはだかる。


「バイアス、どいてくれ」

「落ち着け」

「どけと言っている!!」

「セティ!!」




何百年ぶりかに呼ばれたその名に思わず沈黙する。




「あの眼は正気を保っている眼じゃない。
あの娘はお前を失ったって泣くんだぞ」

「……しかし、ライアは…」

「この森を大切に思っていたのだろう?」

「……」



ドスッ





「ぐ…っ」

「バイアス!」


その形の良い唇から鮮血が漏れる。
その壮麗な顔を歪ませて振り向き、自らの腹部に穴を穿った触手をひきちぎる。

ブチブチィッ!

ざわっ



ひきちぎられた瞬間全ての触手が激しくのたうちまわり増殖する。
まるで過剰な防衛反応のように。





「フクロウ!そいつを守れ!!」

「バイアス!!無茶だ!その傷じゃ…」





かまわん、と、彼の口が言っているのが見えた。



「さぁ、王。少し奥へ」

「っっ!嫌だ!友を置いて行けるものか!!」

「あなたにしか出来ない事が残っているでしょう!」

「……?」




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