「………」





リンはそっとチェオの目を閉じさせると、洞窟の中に入った。
顔を上げたライアは、泣き出しそうな顔でリンを見た。
初めてみるライアの表情に、リンは内心動揺した。



「リン…」


真っ青な震える唇が、か細い声で告げる。





「思い出したの…家族の事、私の事…」







ライアは貧困街の生まれで母親と兄姉を早くに亡くしたらしい。
そして、ライアはある少女趣味の金持ちに気に入られ、父親はそこの庭師として職を得た。




「その後が…思い出せない…」


「ライア…」





洞窟の外に気配を感じ言葉を切る。

「じっとしてて」と言い残し、リンは外に向かう。

クンッ



「一人に…しないで……」




弱々しく腕を引いたライアに、リンは優しく微笑み抱きしめた。



「すぐ戻るから…」







突然の事が沢山あってショックが大きいのはリンも同じはず。
しかしリンは落ち着いていた。



洞窟の外に出ると、十数人の羽付きに囲まれていた。





普段のリンであれば、この人数をあしらうのはたやすい。
しかし毒が少なからず回っている身体では、本来の力の5分の1も出ない。



生まれて初めて、リンはその背に嫌な汗を感じていた。