最初に口を開いたのは、アキ。
小さな体でもその自信は何倍もの威厳を見せる。
特徴たる金毛を揺らし、自信に満ちた笑みをクルテッドに見せる。

その姿を、意識朧げなリンが、ぼんやりと見ていた。


「リンはかの石帝から敵だったはずのあたし達を助けた。それにこの子は嘘なんか知らない。そーゆー目をしてんだよ」


「…さよう」

次に口を挟んだのは、石帝クロスメイアス。
強固に光るその瞳は、愛しげに、優しげにリンを見下ろす。
深く轟くその声は、意識が揺らぐリンの体の芯を確かに響かせる。

「我はただ死に場所を求めて闘っていた。自分の自尊心を守る為に……だが、主は今だ自尊心を捨てられずにいる我を笑う事なく受け入れて下さった。その広い度量に、我はこの死にぞこないの命をかけると決めた」








そしてまた、しばしの沈黙。


「………おや?寝てしまったようだね?」

沈黙を破ったクルテッドの言葉に、一同が一点に目を落とす。
リンが、意識を失ったように寝付いていた。

「ひょっひょっ安心したのかな?」
「は?安心?」

「言ったろう?人間とは作りが厄介な生き物だ。その分、考える事も厄介なんだよ」