しばらくして、リンの額に浮く汗がひいてきたのを確認すると、クルテッドはリンの手に刺した針を抜いた。

「後は、この青年自身の精神力でなんとかしないとならないね」
「あんたの針でも治せないのかい?」

思わず聞いたアキにクルテッドはそのとぼけた容貌を向け、やはりとぼけるように笑う。

「ヒトは我らよりよほど厄介な作りになっている。儂のする"手助け"は少ししか出来ない場合だってしょっちゅうさ」

それを聞いた一同が悔しそうに俯くのを見て、鍼ネズミは愉快そうに首を傾げる。

「それにしてもけったいな事よ。たかが"洗礼"を受けに来ただけのこの羽付きの青年に、何故諸君らのような者達が入れ込んでいるものやら。興味深い事よ。」

厭味のない、あくまで無邪気な問い掛け。

「のう?仲間以外には何処までも軽薄なので有名なアナイトセタ、そして誇り高い石帝クロスメイアス」








しばしの沈黙。



しかし迷いの沈黙でない事は、クルテッドにもわかった。

「………はっ決まってんじゃないのさ」