「旅人さん?」
透き通ったガラス玉のような声は、まるで歌うようだった。
 俺は無言で頷いた。
「君は、なんでここいるんだ」
俺の素っ気ないく言った。すると、彼女はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに胸を張った。
「この町の住民よ」
「町って・・・」
俺は思わず、辺りを見渡した。
 そこには、一面真っ白で建物なんて彼女の後ろにある木でできた小屋だけだった。
 小屋の後ろに小さな森があるが、それだけだった。
 彼女はそんな僕を見て、悲しそうにフッと微笑んだ。
「今は、私1人しかいないの」
「どうしてだ」
反射的に聞いてしまった俺は、後悔した。
 俺に関係ないことだ。それに、きっとそれは彼女にとって辛いことだ。
「私たち種族の、特殊な病気で。」
「君は、大丈夫なのか?」
そう聞くと彼女は、淡く微笑んだ。
 それだけで、直接的な答えは返ってこなかった。
 俺も、何も言えなかった。あまりにも、彼女が悲しそうだったから。
 長い沈黙が俺たちの間に降りた。
 俺は耐えられなくなり、バイクにまたがった。
「お気をつけて」
彼女はニッコリと笑って、手を振った。その笑顔は太陽の様に明るいのに、どこか陰っていた。