なんで?なんで?

どうして?

疑問符ばかりが頭を巡る。


ポカンとする私の視界に、急に桜田くんの顔がアップとなって近付いてきて、思わず私は後退った。

すると軽い衝撃が背中を襲って逃げ場がないことを知る。

目の前の彼は私に覆い被さった形で私の顔の両横に腕をついていた。



「あ、あの…」



どうしたらいいのか分からなくて漏れた声は高く上擦る。

桜田くんの冷たい無表情が怖くて、やたらと心臓がバクバクと音を立てていた。



「さ、桜田く…」

「こうして人が少なくなるまで帰るのを遅らせたのは、俺に鉢合わせないようにするため?」

「えっ」

「いつもはもっと帰るの早いよな?」

「………」



どうして知ってるの、と疑問に思うより先に

図星のその言葉に体が嫌に緊張した。

そしてそれは彼にも確実に、伝わっていて。