ミコトにのしかかるあいつを見た瞬間、

怒りだけが全てを支配して、なにも見えなくなった。

引きずり倒して殴り付けて、

ミコトを振り返る余裕すらなかった。

守ることの意味を、

取り違えて

俺のやったことで、ミコトがさらに傷を追うことも気付かずに―――。




俺は眉間の拳を下ろし、荒い息をついている時田に目を向けた。

結局

俺は何も成長していない。

やるべきことは見失ったまま、その場の感情にだけ躍らされているだけだ。


――――最低、だ。


「悪かった」


顔を上げた時田に、それだけ言うと、俺はミコトの家へと足を向けた。