「よそ見ばっかりしてると奪っちゃうかもよ」

そのひと言に、一瞬で頭に血が上った。

考えるより早く。

手が動いて、時田の首を締め上げていた。

「っざけるなっ」

自制できない怒りが込み上げる。

「近寄るなって言っただろっ」

時田の襟を握りしめる手に力が篭り、ぎりぎりと喉を圧迫していく。

「…ぐっ…」

くぐもった声をあげ、時田の顔が歪んだ。

皮膚の色が青く変色していく。

逃れるように強く腕を握られ、俺は、はっとして手を離した。

「げっげほっ」

解放した時田が、身体をくの字に折り曲げ、首を押さえながら咳込む。

その姿を茫然と見つめ、微かに震える手を握りしめた。


………また、……だ。


拳を眉間に押し当て、目をつぶる。

二年前のミコトが、瞼の裏に浮かんだ。