バンッ!

いきなり開いたドアにビクリと体が跳ねた。

乱暴な足音と共に生徒会室から飛び出して来た、女の人と目が合う。

彼女は軽く目を見開いた。

わたしもきっと同じような顔をしていただろう。

「………」

短い沈黙。

吉仲真由は、目を逸らすと、すっと背筋を伸ばし、わたしの横を通り過ぎた。

時が止まったような錯覚。

足音が聞こえなくなるまで息すら出来なかった。

「………」

ゆっくりと生徒会室のドアに目を移す。

気付いてしまった。

吉仲真由の口紅は、少しだけはげ落ちていた。

まるで


キスしたみたいに。