「俺は佐和さんが幸せなら別に邪魔するつもりないから。
いきなり困らせるようなこと言ってごめんね」

謝る藤平くんに、わたしは肩の力を抜いて首を振った。

「……藤平くんは、強いね」

いつの間にか身体の震えは止まっていた。

顔を上げると、藤平くんは「んー」と眉を寄せた。

「強いわけじゃないよ。
やっぱり振られるのはキツイし、辛い。
でも俺、自分の感情を秘めるっての苦手なんだよね。
誰かを好きとか嫌いとか心で思ってるだけで相手に伝えないままだったら、
なかったことと同じじゃん?」

「……なかったこと?」

「うん。
思って、なかったこと」

呆気にとられて、藤平くんを見る。

彼は少し照れたように頬をかいた。