「節操のないのはお前も同じだろうがよ」

聞き取りにくいほど低い声で呟いて、時田は、殺気の篭った視線を俺に向けた。

「取られたくないなら、四六時中へばり付いてろよ。
あっちもこっちもいい顔してるから、出し抜かれるんだよっ。

縛るだけ縛って、中途半端に放り出してんじゃねーぞっ」

吐き捨てて、大きく息を吐き出す。

それから右手で目を覆い、額に零れる髪をかきあげた。

「あーごめんね、俺としたことが、なんか熱くなっちゃった」

顔をあげたときには、時田はいつもの感情の読めない笑顔に戻っていて、俺に背中を向け、ミコトの部屋の明かりを見上げた。

「まー種明かしするとさ。佐和ちゃんは俺と付き合うフリするだけだよ」

「……ふり?」

「佐和ちゃんは、浅倉っちに依存する自分を変えたいんだよ。
男嫌いも直して、浅倉っちの負担にならないようにちゃんと独り立ちしたいんだって。
んでついでに浅倉っちにヤキモチ焼いてくれたら万々歳ってとこかな。
だから、俺と付き合うと一石三鳥ってなわけ

……でも、だからって油断しないでね」

時田はひらひらと手を振り歩き出した。