わたしは目を伏せ、握りしめた手に力を込めた。

時田くんの提案に魅力を感じないわけじゃない。

恐怖心から逃げてるだけの自分を変えて、蓮くんの本音を探るには

それは最善の方法かもしれないから。

だけど

「……そんな試すみたいなこと出来ないよ」

「嫌なら無理にとは言わないけどさ。
佐和ちゃんは今の曖昧な関係のままで満足なの?」

「満足…じゃないけど」

「――試してみて自分が選ばれなかったらって不安?」

「……………」

それは図星で。

わたしは黙り込んだまま、じっとカップを伝う水滴を見つめた。