「協力しよっか?」

「協力?」

時田くんの言葉に顔を上げる。

彼は冷めたコーヒーを持ち上げると、なんでもないことのようにさらりと言った。

「佐和ちゃんさ、俺と付き合わない?」

「え?」

息を飲み顔を強張らせる。
時田くんはコーヒーに口をつけながら、困ったように首を傾げた。

「そんなに身構えないでよ。
フリだよフリ。
付き合ってるフリ」

「……ふり?」

「そ。要はさ。佐和ちゃんは自分を変えたいんだよね?
だったら浅倉っち以外の男ともコミュニケーションとったほうがいいと思うんだ男は怖いと先入観を持つから怖いんでしょ?
徐々に慣らしていけば平気になると思うよ」

「でも。付き合うって………」

「だからフリだよ」

軽く片目をつぶり、時田くんはコーヒーを飲み干した。

「浅倉っちはさ、佐和ちゃんが自分の手の届くとこにいるから油断して浮気してんじゃない?」

「浮気……ってわけじゃ」

「ま、そのへんは詳しく知らないけどさ。
本心知りたいんだったらヤキモチ焼かせるのが効果的だよ?
きっと浅倉っちも焦ると思うな」