「佐和ちゃんはさ。今のままでいいと思ってるの?」

意味を掴めず尋ね返す。

「……な、んのこと?」

時田くんは俯き加減に、コーヒーに口をつけ、目線だけを上げた。

「浅倉っち以外の男と近付くこともできない。
人込みがダメで街も歩けない。勿論ラッシュの電車なんか到底無理。
これじゃあ、この先まともに生活すら出来ないよね」

きっぱり言って、机にカップを置く。

それはその通りで。

わたしは机を見つめたまま、唇を噛んだ。

確かに

わたしは蓮くんがいなければ、なにもできない。

一人取り残されれば、身動きすら出来なくなってしまうだろう。

「………」

時田くんは黙り込んだ私を見て、慌てて手を振った。

「別に佐和ちゃんを責めてるわけじゃないよ。佐和ちゃんにも臆病になる理由はあるんだろうし。
ただ浅倉っちは過保護過ぎるんじゃないかって思ってさ」