怒らないの?
そんな疑問を浮かべたままヘウ"ンは雑巾を持って窓を拭く。
そういえばバースも怒らなかった。本当は怒ってたのかもしれないけど、怒りを表す言葉はなかった。バースは短気だってビオラさんが言ってたのに。
「呆れちゃって怒る気になれないのかな」
その時、ヘウ"ンの後ろを数人の神人が通り過ぎて行く。
「あの子じゃない?扉を転移させたのって」
「本当だ」
「私の先生も調査に行ったわよ」
「迷惑よね」
そして彼女達はすぐに別の話題を始めた。
彼女達の言ってる事は当然の事なのに、胸が締め付けられるように痛くなり涙が出そうになった。でも負けたくない思いで必死に涙を止めた。誰に負けたくないのか分からない。
暗いその場に遠慮なしに明るい声が響く。
「ヘウ"ンちゃーん」
「ジュリアさん!」