「バース…」
「もう一度」
「バース」
「最後に」
「バース」
その時頭の上に置かれてバースの手が温くなった。その温もりは全身に回り、動揺していた気持ちが落ち着く。
「いいぞ」
バースの呼び声に目を開くと、バースの瞳の中に人の姿が写った。
「戻った!?」
見下ろしてみると確かに人間に戻っていた。だがバースは「完璧じゃない」と言った。
ヘウ"ンはよく見る為に泉に自分を写した。
身体は人間の姿。昨日貰ったスーツもちゃんと着ている。顔もヘウ"ンの顔だが、頭の上に黒い猫耳が生えている。触ってみるが残念ながら本物だ。
泉にヘウ"ンの後ろに立つバースが写る。
「お前は今人間と聖獣の間にいる」
人間でも聖獣でもない。それは自分のせいだ。
「ごめんなさい。私神書を開いてしまった」
「扉は?」
「消えちゃった…神書も」
「とりあえずばばあに報告しに行かねえとな」
やはりバースは怒っているのか、一人で先に教会に向かって歩き出した。ヘウ"ンもバースと微妙な距離を取りながら歩き出す。