教会の森で一匹――いや、一人の神子が迷い悩んでいた。
「どうしよう…有り得ないよ、こんな事」
そう有り得ないのだ。もう人ではない。
「人じゃない…」
扉から少し離れた所にある泉に、ヘウ"ンはもう一度自分の姿を写した。昨日から同じ動作を繰り返している。それだけ信じられないのだ。
泉の鏡に写ったのは黒髪の少女ではなく、一匹の黒猫だった。
どこからどう見ても小さな猫だ。
「何でこんな事に…」
でもヘウ"ンは何が原因なのか分かっていた。
「きっと神書だったんだ」
そしてヘウ"ンが神書をよんだ事により、扉はどこかに転移してしまい神書も消えた。
「バース…」
泉がヘウ"ンの涙で揺れる。取り返しのつかない事をしてしまった。
バースが五年かけて封印した扉を、ヘウ"ンが開いてしまった。
どうにか出来ないかと悩んでいると、背後から草を踏む音がした。