その女の人は端正な顔つきで、インテリなメガネをかけていた。
スーツもきちっと着こなして、私より4~5歳上だろうか。
どっからどう見ても仕事ができそうな人だった。
私たちは奥の部長室でエリス部長の帰りを待つことにした。
エリス部長のアシスタントの女の人は綺麗な足を斜めにソファーに座った。
それにつられて私も向かい側に座った。
「エリス部長のこと、どう思った?」
「え?」
「気難しそうな人?」
「はい・・・、私怒られてばかりで・・・その、ファッションに興味が・・・」
「まぁ、見るからにそうね。」
「す、すみません。」
「あの人はね、私の唯一尊敬できる人よ。
常に最先端に立って、流行の流れを読むの。
あの人についてから、あの人の感覚が鈍るなんてところ、見たことないわ。」
「じゃぁ、何故異動に?」
「社長の親戚の息子、つまりコネよ。
そいつがどうやら、この椅子を希望してきたらしいの。」
「そうなんですか。あの・・・こんなタイミングで変なことかもしれないですけど」
「何?」
「お名前、伺って良いですか?」
「あら、言ってなかったかしら。中芽 由利(なかめ ゆり)よ。由利で良いわ。」
「ゆ、由利さん、本当なら由利さんがここのアシスタントじゃ?」
「ふふふ。甘やかされて育ったお坊ちゃんの面倒を見ろって?
嫌よ。
私は自分で手芸部門に異動希望を出したわ。
もちろん、エリス部長のアシスタントとして。
私の仕事はね、あの人が何不自由なく、スムーズに仕事ができるよう、サポートすることよ?
今は、先に手芸部門に入ってエリス部長のために、準備してるところ。
あなたも、アシスタントなら、それくらいの仕事はなさい?」
「でも私、怒られてばかりだし・・・」
気付けば私は由利さんに愚痴をこぼしていた。