「でも、プラダを着た悪魔は、全てを捨てて元の生活に戻るのよね。
そして、意地悪な編集長もその背中を押す。
こんな話佳枝理にはできないけど、
ちょっと理解するのが難しい話だったわ・・・・」
私は知らなかった。
私の背中を見送りながら、優子が呟いていたことを。
私はオフィスに戻ることで精一杯で、やっとオフィスに辿り着いたときに時計はぴったり15分前だった。
「セーフ・・・だよね・・・・。」
そう思ってデスクに向かうと、
私のデスクにはスラリとした女の人が寄りかかっていた。
「遅い。」
「すみません・・・、あのー。」
「私はこのデスクで働いてたの。あなたが来る前。」
「え?ってことは・・・」
「エリス部長のアシスタントよ?
私は休憩終了15分前に帰って来いって言われたら、20分前には帰ってきてたわ。」
「す、すみません。」
「まぁ、いいわ。
エリス部長に用事があって来たら居ないみたいだから、あなたに聞こうと思ったけど、
その調子だと知らなさそうね。」
「す、すみません」