「あはははは!」
「もう笑いごとじゃないんだってば!」
お昼になり、私は前の通販カタログ部門で知り合った優子とランチに来ていた。
入社当時、優子とは同期で、同じ部門にいた私たちはすぐに打ち解けた。
その後、2年後に優子は料理雑誌部門に異動してチーフになった。
つまり出世。
今では毎日一緒にランチして、いろんな話もする仲になった。
「まるでプラダを着た悪魔ね。」
「プラダ?エリス部長がプラダを着てるってこと?」
「違うわよ。佳枝理、もしかしてプラダを着た悪魔を知らないの?」
「うーん・・・名前は聞いたことあるような・・・、リッチな悪魔ってこと?」
「はぁ~。映画よ映画!洋画でね、いわゆるシンデレラストーリーみたいな感じ?」
「へぇー。どんな話なの?」
「主人公は、まぁ、あんたと同じように不本意にファッション雑誌編集長のアシスタントになるの。
で、その編集長が偏屈な感じなの!」
「エリス部長みたいな?」
「そう。おしゃれに無頓着だった主人公には毎日がとっても大変で、でもおしゃれを学んでいくのね。
そして素敵な男性も現れる!」
「まさにシンデレラね。」
「そう。そして何もかも手にしていく彼女はプラダを着た悪魔って言われるのよ。」
「ふーん。」
「あんたも、そこでしっかりおしゃれ学んじゃえば?」
「私にプラダを着た悪魔になれって言うの?」
「そう、そして良い加減新しい男を見つけなさい?」
「その話は・・・」
「私が思うに、今回の佳枝理の異動は近藤の仕業よ?」
「近藤部長はそんなこと・・・」
「佳枝理!良い加減目を覚ましてよ。
あいつはあんたの好意を利用してるだけ。遊びにすぎないのよ?
あんただって本当は分かってるんでしょ?」
「・・・でも、好き・・・なんだもん。」
「はぁー、あんな男のどこが良いんだか。」
「ごめんね、優子、あとちょっとだけ目を瞑ってて?」
「まぁ、私は良いのよ。でも、あんたが「あーーーー!!!!」
「何!?」
「いっけない、15分前に戻って来いって言われてたんだった!
優子ごめん、先行くね!」
「頑張って~」