由季は先輩と楽しそうに話している。
その時、チャイムが鳴った。
「ヤバい!幸、戻ろう!」
由季は私の腕を掴んで走り出した。振り返って先輩に向かって、
「返事書くから待っててね。」
「おう。てか、本当にマズいぞ。早く教室戻れよ。」
「はいは~い。」
見送ってくれる先輩に私はおじぎをして急いで階段をのぼった。
教室に入るとまだ先生は来ていなかった。
「セーフ。」
由季は息を切らしながら言った。私も息を切らしながら、さっきから気になっていたことを聞いた。「先輩から渡されたノートって何?」
由季はニヤっと笑って私にノートを渡した。
「えっ、見ていいの?」
「一番最初のページならいいよ。」
私は戸惑いながら最初のページを見た。

松本 由季
16歳
誕生日、8月2日 血液型 AB型
趣味 買い物、カラオケ
特技 結城先輩がどこに居ても見つけられること


このノートは由季と先輩の交換ノートだった。私は思わず笑ってしまった。
「人がせっかく見せてあげてんのに、笑うなんてひどい。もう幸にはみせてあげない。」
由季は怒って私が手にしていたノートを取り上げた。
「ごめん、笑ったのは悪かったよ。だってまさか交換ノートだとは思わないじゃん。」
「交換ノートしてるのがダサい?」
「そうじゃないよ。だって携帯があるのに何でわざわざ交換ノートするの?メールとか電話でいいじゃん。」
「書くからいいの。それに後にも残るし、そしたらあの時はああだったね、こうだったねって話せるでしょ。」
そう言って由季は自分の椅子に座った。「由季怒ってるの?ごめんね。」
由季は頬を膨らまして、
「じゃあ、幸も圭吾としてよ。」
「何でよ?だいたいあの面倒くさがりの圭吾がするわけないよ。」