16の夏。
私、七海 幸は一人の人を愛していた。
「ごめん、待たせたな。」そう言いながら走ってくる彼。
「ううん。私も今、終わったとこ。」
彼の名前は畠山 圭吾。
「グランドまで幸が吹いてるフルートの音が聴こえたよ。」圭吾はサッカー部で私は吹奏楽部。終わる時間はバラバラなので、いつもどちらかが待って一緒に帰っている。
「圭吾、もうすぐ試合なんでしょ?レギュラー取れるように頑張んなきゃね。」「大丈夫だって。もうレギュラー取ったも同然。」
笑いながら言う圭吾の横顔。私は圭吾の横顔を見ると嬉しいし、安心する。隣にいるという実感が湧いてくる。
学校から私の家は歩いて10分くらい。圭吾は自転車で通っているが、一緒に帰る時は自転車を押して私を家まで送ってくれる。私が二人乗りしたいと言ったことがあったが、圭吾はやだと言った。理由は、少しでも長く一緒に居たいから。それを聞いた時、嬉しかった。
私達の間には、いつもと変わらない時間が流れている。これからもずっと。そう思っていた。