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夜の街の空気は淀んでいて、今のあたしみたい。
愁哉さんのマンションを出て、あたしはただ道を歩く。
左手のリングはまだ綺麗にその存在を示していて、置いていかれた感情の様にあたしを嘲る。
『形ばかりの関係だから苦しくない?』
彼女の言葉は深くあたしの胸に突き刺さった。
苦しくない筈なんてない。
形ばかりの関係がよりあたしを縛り付けた。
好き
好き
好き過ぎて
どうにかなってしまいそうだった。
長い片思いは
決して報われないと
初めから知っていたのに。
ねぇ、愁哉さん。
もしも違う出会いがあったとしたなら
あなたはあたしを見つめてくれたかしら。
ぼやける視界に、
あたしはリングを外す。
零れ落ちる涙は、とめどなく。
好きでいたかった。
ただ、そう思った。
Fin