「…追わないのですか」

あたしは愁哉さんを見上げた。


整った顔、癖のない綺麗な細い髪、レンズ越しでも尚理知的な瞳は、今、バタンと閉まった扉を追う。


「追う必要のある関係ではありません」


その言葉に、言い得ぬ感情がまた、あたしを襲う。


「あなたもおっしゃったでしょう。体だけの関係に先はないと」


愁哉さんは少しだけ、自嘲した様に笑った。


そして、あたしは、どうしてもこの疑問文にぶつかる。


「あなたは…いつまであたしの傍にいるつもりですの?」



心臓がキリッと痛んだ。