冴木さんの瞳は揺れて、今にも泣き出しそうなのに気丈な光を崩さない。
「冴木、彼女は人形じゃない。君の言葉に傷つく一人の人間だ」
愁哉さんの声が二人の間の空気を遮断した。
「琴音さん、無礼を申し訳ありません」
淡々とした口調、
あなたが何を思って言ったのか分からない。だけど『人形じゃない』そう言ってくれた事で
もうそれだけでいい。
「っ…、失礼します」
堪えきれなくなった涙を冴木さんは振り払う様に拭って、部屋から飛び出た。
想いを伝えずとも
あんなに真っ直ぐに感じられる感情に
何も感じないと言えば嘘になる。
冴木さん、
あたしはあなたが死ぬ程羨ましい。