彼が好き。
好き過ぎてどうしようもない。
それはいつか歪に曲がって素直な表現の仕方を忘れてしまった。
「…わ、私」
冴木さんはどもる声で目を伏せる。
今にも泣き出しそうに唇を噛む彼女に、それでもあたしは嫉妬する。
「部長に用事があって、それで尋ねました。こんな夜更けに、申し訳ないです」
頭を下げる彼女の守ろうとする物が何なのか分からない。
だけど、あたしは
「そう、ご苦労様」
穏やかに笑う。
そうしなければ、立っていられないから。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…