彼が好き。


好き過ぎてどうしようもない。


それはいつか歪に曲がって素直な表現の仕方を忘れてしまった。



「…わ、私」


冴木さんはどもる声で目を伏せる。


今にも泣き出しそうに唇を噛む彼女に、それでもあたしは嫉妬する。


「部長に用事があって、それで尋ねました。こんな夜更けに、申し訳ないです」


頭を下げる彼女の守ろうとする物が何なのか分からない。


だけど、あたしは


「そう、ご苦労様」


穏やかに笑う。


そうしなければ、立っていられないから。