「仕事などしなくても家庭に入りなさい」

父様は威圧的に言う。


またあたしは閉じこもるの?


それじゃ何ひとつ変わらない。


以前、こもりがちだったあたしに恭平さんが言っていた

『琴音ちゃん、閉じこもっていても何も見えないだろ?少なくとも今は。ここにいたいなら、周りを見る事だよ?』


世界を歩く彼に言われた言葉はあたしに響いた。


「僕は、よろしいかと思いますが」


愁哉さんの声にあたしは視線をとられる。


「私もそう思いますわ。琴音さんの成績、学生時代からかなり優秀だったんでしょう?勿体無いですもの」


そして、智恵さん。


父様はやれやれといった表情で、「まあ、よく考えるんだ」と口を結んだ。