愁哉さんは困った様に笑うと
「その呼び方はやめて下さいと言っているでしょう」
眼鏡の奥の瞳にぶつかってあたしはそれでも視線を逸らさない。そうする事が、彼には効くのだと知ったのは最近。勿論まだすぐ逸らしてしまうけど。
「抱いていても構いませんわ。あなたは私が一番大事ですから」
そう、だからさっきも、美也子さんが挑戦的な行動をしても彼があたしを優先する事は分かっていた。自分に対する印象がどうなろうと、あたしを守るものね。最も、彼女には大した興味などなかったのかもしれない。
「あなた程、自分の立場を分かってらっしゃる方はいませんね」
愁哉さんは、ひどく綺麗に笑った。