愁哉、確かにそう呼んだ。

愁哉さんは全く表情を変化させずに


「ええ、お嬢様は美しい」


まるで機械の様に決まった言葉を吐く。

美也子さんは返事に大した興味はないのか「気軽に話してくれない?敬語なんて肩が凝るわ」と面白くなさそうに甘い声を出す。

滑らかな指先が伸びて、愁ちゃんの腕を掴む。まるで、あたしなんていないかの様に。


知り合いだったのね。


あたしの頭にはそれと、ただの関係じゃない事くらいはすぐに承知した。父様と同じ趣味なんて、よろしくないわね。あたしはキリキリする感情にカーテンを引く。


見ないように


見せないように。