「まーすごく綺麗なお嬢様ねぇ。肌もツルツルだし、睫毛も長くてお人形さんみたい」


美也子、父様にそう呼ばれる女性はあたしを品定めするように見る。口ではお世辞を並べたててもその瞳には同性への競争心みたいなものが見えて嫌な気分になる。


「芹沢さん、幸せねぇ」

鼻にかかる甘い声とそれだけで射止められそうな流し目。


あたしには嫌悪感しか湧かない。


「私には勿体無い方ですわ」


愁哉さんに向けられるフシダラな視線を遮って微笑みを返す。小さな頃からもてはやされた訳じゃない。好奇や嫉妬、よくも悪くも視線を受ける事には慣れてしまったから。


「父様もこんなお綺麗な方お知り合いだなんてズルいですわ。」


穏やかに微笑むと、美也子さんは満足気に高く笑った。