向かったのは、和食料亭。

上品な襖を開けると


「琴音、元気そうだな」

重低音のよく知る声。上に立つ人のオーラを間違いなく身に纏う貫禄ある姿。


愁哉さんは「お待たせして申し訳ありません」と深々と会釈を返す。


『あなたが最優先です』

そうね。この場合そうゆう事ね。納得する感情と反対に僅かな後悔。


「父様、父様もお元気そうで何よりですわ」


あたしは父を見つめて力なく微笑んだ。