彼の車に乗り込んで、あたしはまた彼の横顔を盗み見る。


「…なんですか」


真っ黒な瞳はあたしを僅かに見もせず単調に声を放った。


「申し訳ありませんでしたわ…」


あたしは思わず声を潜ませた。


「連絡くらいして下さい。」


彼はまた溜め息をつく。


あたしはあなたにそんな顔しかさせられない。


「目を離すとこれだから、ほっとけない」


愁哉さんの小さく洩れた言葉が、ただ義務から来るものでも、


『ほっとけない』


それが嬉しい。