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行く宛もなく静かな道を歩く。並木道は風が優しくて、目に広がる風景に心が和んだ。


母様のお墓参りを済ませてから、運転手を帰してあたしは1人散歩をしていた。


母様はあたしがまだ小さい頃に亡くなってしまったけれど、父様と母様の友達の息子だった愁哉さんは母様と幼い頃何度か会っているらしい。


あたしの記憶は薄れてしまって、写真に残る優しくて人形みたいに綺麗な母様を懐かしく思った。

近くのベンチに腰を下ろして眩しい空に目を瞑る。


『もしも、大切な人が困っていたとしたら、そばにいて助けたいわよね?だけど、そばにいられない状況ならどうする?』


瑠香さんがあたしに残した疑問文。


あの時は、あたしの感情を見透かされている様な気がして困った。


『そばにいられない位置から助けてあげる』


あたしは何も考えずそう答えた。


そばにいるとか、いないとか、そんなジレンマをあたしは真っ直ぐに見つめていなかったのね。