愁哉さんは、母の事を知っているのね?


記憶の少ないあたしには羨ましい。


その言葉に、彼は微笑む。滅多に見せない優しい微笑にあたしは戸惑った。


「とても優しい人でした。お嬢様もきっと、これからもっと綺麗になります」


口調はいつも淡々としているのに、その言葉が甘く響いて、あたしはまた目を伏せた。


長い、長い


片思い。


報われる事のないそれを


あたしは大事にしまった。