囁くように、
ゆっくり言ったお母さん。




その眼は優しくて、
何故だか涙がにじみ出てきた。




「嘘だよ」


「菜子」


「嘘だよ!
だってあたし、お父さんに嫌われ・・・」


「子供を嫌う親がどこにいるの」




座ったままあたしに近づくお母さん。



アルバムの握りっぱなしの手を、
ぎゅっと強く握られる。




「お父さんが仕事から帰ってきたとき、
1番先に行くのはあなたとお兄ちゃんのことよ」



そっと手からアルバムを抜き取られ、
変わりにお母さんがあたしの手を包む。



「お父さんは優しい人なの。

今仕事が忙しいのだって、
お父さんと仲間の人のためなのよ」



お母さんの声は柔らかくて、
無意識のうちに涙がこぼれる。




「菜子との約束が守れなくて、
すごく申し訳なさそうだった。

小さい時も、
ずっとそうだったわ」





初めて知るお父さん。

涙を零しながら、
お母さんの話に耳を傾ける。