どきどき高鳴る鼓動は、
治まることを知らなくて。




正常な音程を忘れてしまったようだ。




譲輝くんになでられた髪に、
そっと自分の手を置く。




髪なのに。


神経通ってないのに。






――――熱いよ・・・・・。





熱さを覚ますかのように、
ぱっぱっと髪を直し、門に手をかけた。



玄関の戸をあけると、
タイミングよくお母さんが階段から降りてきた。



「ただいま」


「お帰り、菜子。
ちょっとおいで。いいものあるよ~」




ニコニコ笑いながら、
また階段を上っていくお母さん。




――――なんだろ?




疑問に思いながらも、
ローファーを脱ぎ捨て階段を上がる。





「こっち、こっち」