「藤田っ、すぐに先生が来るぞ!

今のうちに逃げろ!」


入口を見ると、人だかりを掻き分けて来た、本田くん。


そっか、先生に見つかったら

怒られちゃう!


「早く!」


「天使、あんたも早く、一緒に来てっ

帰るわよっ」



濡れた床で滑らないように気を付けながら

ずぶ濡れの二人を回り込み

教室に戻り、

左手にランドセルをつかみ

右手を本田くんに引っ張られて

一目散に走り出す。

(かおるっ

ボク平気だぞっ

見えないからなーっ

先生にも見えないぞっ)

天使はそんなことを得意気に訴えながらも

ぎゅーんと飛んでついてくる。



もちろん

頭上に輝く天使の輪は



無かった……