「この単語を訳すと……」

分からないという箇所を一から丁寧に教える。

俺の言葉にうんうんと頷きながら、桐島は真面目に聞いていた。


先程の女子生徒とは違うみたいだ。本当に聞きに来ただけらしい。
…自意識過剰になってたか。


説明し終えると、難しい顔で、

「そういう訳し方になるんですね…。じゃあ、どうしてこの文はこうなるんですか?」

と、次の設問について疑問をぶつけてきた。


「…いいところ突くな。この文の場合はだな…」


教えることに没頭していた。桐島は理解力があり、飲み込みが早いので教えがいがある。
何よりも、俺の説明を真剣に聞いてくれる。

教師として、初めて楽しいと感じた瞬間だった。